2023年2月23日木曜日

香港生活の立ち上げ記録

20230223_Blogger0019

香港の大学に異動して半年ほどが立ちました。さすがに生活の方は落ち着いてきました。大学の業務の方はまだもろもろ一回りしていないので、未経験の部分も多いですが、引き続き慣れていこうと思ってます。

異動に際して、たくさん事務手続きをこなしたので、記録をまとめてみました。自分もウェブ上の日本語の記事にずいぶん助けられたので、これらの情報がどこかで誰かの役に立つことがあれば嬉しいです。

オファーもらうまで

応募

香港科技大学のポジションに応募したのは 2022 年 2 月頃でした。知り合い経由で情報をもらって、「良さそうかも」 と思って応募しました。科技大の現在の採用情報は こちら から検索できます。

Short interview

2 週間ほどで “short interview” (事前面接?) の連絡が来て、3 月の上旬に 20 分程のオンライン面接を受けました。short interview というのは初めての経験でしたが、特に準備を要求されることもなく、選考委員と雑談をして終了でした。このあと、すぐに連絡が来て、3 月下旬の “full interview” に進みました。

Full interview

Full interview は 1.5 日でした。1 日目の午後に 「これまでの研究」 に関する発表を 60 分、「これからの研究と教育」 に関する発表を 15 分行い、それ以外は選考委員会や現在の学科のメンバーと 30 分ずつの面談、という内容でした (合計 14 人と面談)。この内容はたぶんアメリカ式の面接としてはスタンダードな内容。

採用通知・契約

その後 1 ヶ月ほどして採用の (仮) 連絡をもらいました。大学内部での事務処理などがあり、大学からの正式な書類が届いたのは 2 ヶ月後くらいでした。職位によって承認プロセスに違いがあるとのことで、自分が採用された Assistant Professor (助理教授) だとこのくらいでした。大学からの正式書類にサインして送り返し、ここから異動に向けた準備が始まりました。

補足

  • 以上のプロセスは、コロナ禍ということもあり、全てオンラインで進みました。2023 年 2 月現在、faculty member の選考は基本的に対面に戻っており、特別な事情がなければ少なくとも Full interview は現地で行われると思います。

  • 大学からの正式な採用書類にサインする前に、一度大学を訪問させてもらいました。コロナ禍で、香港入境にはホテルでの一週間の強制隔離が必要でしたが、そもそも香港に行ったことがなかったので、これは絶対必要、ということで先方にお願いしました。隔離ホテルの手配作業や訪問のための費用は、全て先方が負担してくれました (この辺は日本との違いを感じます)。

  • 選考のプロセスは概ね、増田直樹さんの『海外で研究者になる - 就活と仕事事情』 に書かれているとおりだったと思います (実は採用通知もらってから読んだんですが…)。short interview というのはちょっと特殊な気もしますが、ほんとにただの緊張ほぐし、もしくは様子見だったような気がします。

異動準備 – 研究関連物品の移送

大学と正式な契約を交わしたのが 2022 年 5 月末、ここから異動関連作業が始まります。まず必要だったのは研究関連物品の移送です。大きな作業は以下のとおりです。

  1. 物品移送に関して、現所属の規定確認
    これは幸いなことに京都大学と香港科技大学が 「大学間学術交流協定」 というのを結んでいたため、それほど悩むことなく物品の移送許可が取れそう、ということがわかりました。このような協定がない場合は、もう少しややこしい事務処理プロセスになるかもしれません。

  2. 安全保障輸出管理に関する書類の準備
    移送できそうと分かったあとは、安全保障輸出管理に関する作業を始めました。詳細は省きますが、輸出するものが相手国で兵器などの製造には使われない、ということを示すために輸出する機器類全てに対して 「非該当証明」 というものを取ります (チップやチューブなどプラ製品などについてはいらない)。この証明、ウェブ上で PDF が手に入ることもありますが、そうでない場合は業者さんを通じて手に入れる必要があります。機器類が多い場合はかなりの時間を要します。

  3. 移送業者とのやり取り
    物品の移送に関して、実際に運んでくれる業者さんとのやり取りも 「2」 と並行して進めます。自分の場合は、偶然、少し前に京大から香港科技大学に異動した知り合いがいたので、その方に伺って選定を進めました。複数社調べましたが、最終的にはリコーロジスティクスさんにお願いして運んでもらいました。香港の現地法人もあり、最後まで丁寧に対応してもらえました。

  4. 研究機器以外のものの移送
    研究機器以外のもの (本など) は通常の引越し業者で移送が可能です。本など日常品は上記の非該当証明は必要ありません。自分の場合はクロネコヤマトさんにお願いしました。海外向けの部署があるので、そちらに相談しました。

補足

  • 全体でかかった時間は 2-3 ヶ月でしたが、かなり急いだ方だと思います。半年以上時間があれば余裕を持って準備できたのではないかと思います (ただし、大型機器を保持している場合はその限りではないかもしれません)。

  • 機器やその他の物品の移送費は合計で 100 万円程度でした。基本的には香港科技大学のスタートアップ研究費で支払うことができました。

  • 自分の航空券代、日常品の引越し費用は大学との契約に含まれていました。採用者一人に対して、航空券代の補助が 12 万円まで、引っ越し代の補助が 20 万円まで、という感じです。家族も一緒に引っ越す場合はこれにさらに追加されます。

異動準備 – 就労ビザ・住居

海外で働くので就労ビザが必要です。住居は大学内の宿舎が利用可能でした。

就労ビザ

就労ビザの取得は、基本的に大学のサポートがしっかりしていました。ただし、自分のこれまでの就労に関する証明や学位の証明はもちろん自分で取得しなければならないので、それなりに手間はかかります。手続き段階では PDF でも大丈夫ですが、最終的には原本が必要になるので、書類を郵送してもらう必要があり (というか、原本郵送しかしてくれないところが多かった)、時間がかかります。書類が揃ったら、香港の就労ビザ申請用の書類 に記入して、大学に提出しました。だいたい 6-8 週間でビザが承認される、と言われ、そのとおりでした。

ビザが承認されたらもらった説明書に従って費用 (HK$ 230) を支払い、e-Visa を発行します。それを持って、入境するとパスポートの空いているページにビザの紙切れをパチッと留められます。ビザの承認から半年以内に最初の入境をして、ビザを activate する必要があります (それを過ぎると再申請)。

住居

住居は香港に住む場合、最も大きな問題の一つですが、香港科技大学の場合は、大学内のスタッフ用の宿舎が空いており、すんなりそこに入れました。価格もリーズナブルで、かなりラッキーだと思います。これは香港科技大学がやや郊外に位置しているのも関係あるかと思います (と言っても中心部まで 1 時間もかかりませんが)。

他の香港の大学だと、例えば大学と宿舎が離れている、とか、宿舎に入れても 3 年後には出ていかないといけない、とかあるようです。

異動準備 – 出国前、日本での手続き

出国前、日本でもやっておくべき手続きがあります。

転出届

出国の2週間前から転出届を出せます (たぶんどの自治体でも一緒?)。どこに住んでいるか、は税金をどこに払うか、に関わるので、国外転出届を出すことは大切です。現在、自分は 「非居住者」 というやつです。

マイナンバーカード

転出届を出したときにマイナンバーカードも一緒に無効化されました。ただし、日本に戻ってきた場合は、マイナンバーカードが再び有効化されるので、無効化されたマイナンバーカードはできればもっておいてくださいね、と言われました。失くしても再発行可能なようですが、手数料などかかるようです。

国際運転免許証

一応、国際運転免許証を取得してから出国しました。ただし、自分の場合はこの国際運転免許証を使用することなく、日本の免許証を香港の免許証に書き換えました (持ってきた意味なかった…)。日本の免許証から香港の免許証の書き換えは こちらのウェブサイト を参考にしました (Transportation Department は場合によっては相当混みますので、要注意)。

国民年金

海外だと日本の健康保険には加入できませんが、国民年金には任意で加入を継続できます。加入を継続したい場合は自治体で申請してください。

住所変更に伴う諸々・健康診断とか

住所が変わるので、郵便物 (学会関連のものとか) の郵送先の変更 やクレジットカードの情報変更など、こまごました情報変更をする必要があります。出国前にいくつか健康診断も受けました。

香港到着後

香港の電話番号

香港で色々な手続きをする場合、多くの場合、香港の電話番号の記入が求められます。けっこう重要な連絡が SMS で来たりして、かつ香港以外の電話番号を受け付けなかったりするので、香港の電話番号はなるべく早く手に入れたほうがいいです。ただし、契約型の香港の電話番号は、現地の銀行口座がないと契約できなかったりします。なので、まずはプリペイドの SIM カードを手に入れるのがいいかと思います。プリペイドの SIM カードの電話番号はあとから電話番号そのままで月契約に変更できます (ちなみに 2 年縛りの契約)。

香港にはいくつかメジャーなキャリアがありますが (CSL, SmarTone, 3HK, China Mobile, とか)、いろいろ調べてみましたが、通信状況としてはあまりどれも変わらないのではないか、という印象です。結局自分はプリペイドでなんとなく使っていた SmarTone をそのまま月契約に移行させました。

香港 ID

ビザを取得して香港にやってくると、「30 日以内に香港 ID カードの申請をしてね」 と言われます。「絶対に 30 日以内」 というわけではないようですが、なるべく早い申請が必要です。香港 ID カードは銀行口座開設時に必要だったり、税金の支払いに必要だったり、ということで香港では必須です。

Immigration Department のウェブサイトからオンラインで予約を取って、パスポートやビザを持って面接に行きます。申請者が多い時期だと、予約がなかなか取れないことがあります。自分は 9 月にやってきて、申請者が多い時期だったので、3 週間後くらいにしか予約が取れず、面接に行くまでかなり待ちました。

面接は待ち時間含めて 1 時間程度で概ねスムーズでした。面接後 1 週間程度で香港 ID カードができるので、再び受け取りに行きます。

銀行口座

銀行口座は香港 ID がないと開設できません (2022 年 10 月時)。「パスポートだけで開設できる」 という噂を聞いて意気揚々と大学内の銀行に向かいましたが、冷たく断られました。どうやらマネーロンダリング対策・テロ対策で口座開設のルールが近年厳しくなったらしいです。一昔前は、たしかにパスポートだけでも口座開設できたようです。

(2023.5追記: どうやら銀行によっては今でもパスポートで口座開設できるところもあるようです)

香港 ID カードがゲットできたら、まず口座開設のための予約を取ります。予約が取れたら指定された日に銀行に行き、口座開設を申請できます。

ちなみに香港 ID カード用の面接が終わった段階で、香港 ID が記載された仮 ID カード的な紙を一枚もらえるのですが、それは銀行口座の開設には使えませんでした。試しにそれをもって口座開設の予約をしに行ったのですが、そのときも冷たく断られました。

外務省への在留届

オンラインで外務省への在留届を提出できます (こちら)。登録しておくと現地での危機管理情報などがメールで送られてきます (というか登録は義務だそうです)。

その他

  • 香港の総領事館で 在外選挙人の登録 ができます。こちらも最近気づいてやってみました。
  • 今、車がないので重いものを買うときはよくオンラインショップを使っています。基本は HKTVmall で、特に日本のものを買いたいときは 和楽屋 さんなんかを使っています (値段は高めです)。
  • 最近、「香港の裁判の陪審員候補に選ばれました」 という通知がきてびっくりしました。香港 ID を持っていると選ばれる対象になるみたいです。ただし、香港のこと全然わかってないし、広東語もわからないので、いろいろと理由を書いた手紙を裁判所に送ると、陪審員候補から除外されました。

コロナ関連の対応

異動した 2022 年 9 月頃はまだコロナ関連の規制が残っていて、出国・入境・入境後・日々の暮らし、と様々な場面で対応を迫られました。現在はマスク着用程度しか規制がないのですが、参考程度に当時の規制 & 対応をメモしておきます。

  • 香港のコロナ対応のページ
    何か規制に変更があったときは基本的にこのページを参考にしていました。

  • コロナ対策用のアプリ LeaveHomeSafe
    ワクチン接種の記録などを登録して、レストランに入るときなど常にかざしていましたが、もう使用することはなくなりました。昔は入境直後はこのアプリの色が amber で、その状態だとレストランには入れませんでした。一定期間過ぎると blue になって、レストランに入れるようになりました。

  • 日本入国・香港入境関連の情報
    出入国に関する情報はここを参考にしていました。

  • 香港入境後の PCR 検査の予約ページ
    香港に入ったあと、決まった日に PCR 検査を受けなくては行けなかったのですが、そのときはこのページで予約してから受けに行ってました。

  • その他、日本出国前に空港での PCR 検査・陰性証明書の取得、日本入国前の香港での PCR 検査・陰性証明の取得、香港入境後一週間は毎日迅速抗原検査 (RAT)、など。いろいろありました (遠い目)。

終わりに

改めて見るといろいろやってきたなぁ、という感じです。
どこかでだれかの参考になれば嬉しいです。

Written with StackEdit.

Empirical Dynamic Modeling with rEDM: (2) Near-future forecasting (Simplex projection)

20231015_Blogger0021 *This is an English version of my previous post (first translated by ChatGPT, checked and edited ...